相続相談事例集

相続人が多数に及んでしまった例

A村には、農業用水用の大きな溜池がありました。この村では、通常は設立されている水利組合がなく、ただ単に、利用している農家100人で共有している状態で、登記もそのようにされていました。
その後、時代が変わり、その村では宅地が多くなって農家が減り、溜池の利用価値が大きく減ってしまいました。そこで、村としても人口を増やすことと土地の利用価値を高めるため、溜池を宅地として造成・販売する計画を立ち上げました。
そのためには、まず古くから放ってある溜池の権利関係と登記関係をはっきりさせ、整理する必要がありましたので、村の溜池の権利者たちは、伝手を頼って当相談室に相談をされました。

当相談室では権利者の方々から事実関係を伺いました。
しかし、そこで分かったことは、普通の相続登記とは、全くレベルが違う複雑な事実でした。
最初は100人であった権利者には、数世代にわたる相続関係が生じている上に、相続人の多くは、数世代前に村を離れている状態です。更にお聞きすると、溜池の権利者の相続人として推定される人をざっと調べただけでも数百人を超えるのではないか?ということが分かりました。

当相談室は、村の権利者の方々の説明を伺い、ひどく驚きました。しかし、「これだけの相続関係を正すのはほとんど不可能ではないか?」と困り果てた権利者の方々を見て、何とかしようと考えました。
ここからは、相続登記としては全く異例な綿密な調査と相続関係の明確化作業を開始しました。

調査をして明らかにしてみると、これは極めて複雑なものとなることがはっきりしました。相続人に当たる方は、何と700人を超え、中には、相続人が行方不明というケースが数件ある有様であることが判明したのです。

ここからは、一軒一軒の方をあたり、遺産分割協議を各家々で行いました。中には、既に面識はおろか存在すらお互い知らない親戚間の話し合いもあり、大変なものとなりました。さらに、どうしても行方不明の方もおられ、他の相続人にお願いして家庭裁判所に失踪宣告の手続きを行っていただくなど、膨大な作業となりました。

しかし、幸いにも、この権利関係を争う方はほとんどおられず、これだけの相続関係でありながら、何とか6ヶ月で全ての遺産分割協議が整い、溜池の相続登記をすることができました。